Ending Note



「千春、虎太郎。父さんの喪服の準備と、あと……母さんの友達とかに連絡をしてもらっていいか?」


「分かった。何かあったら電話して。こっちも電話するから」


「……頼んだぞ」



帰り際、パパは消え入りそうな声であたしに「千春、悪かった」と謝った。



病院と家の距離は歩いて10分くらい。

あたしと虎太郎は一言も言葉を発さず、黙々と歩き続けた。



いつもの帰り道。

いつものように、「ただいま」と言って玄関のドアを開ける。



ママが入院してから「おかえり」という言葉を聞かなくなったことに慣れていたはずなのに、胸がギュッとしめつけられた。



「姉ちゃん、父さんの喪服の準備頼む。俺、母さんの友達の連絡先とか調べるから」



まだ高校2年生の虎太郎は、母親が死んだばかりなのに、落ち着いて事を進めていく。



虎太郎の泣きはらした真っ赤な目。時折、鼻をすする音。

本当は、もっともっと泣きたいはずに違いない。