バッグの中からスマホを取り出して時間を確認すると、待ち合わせた時間の5分前だった。
「……今日、誘っても大丈夫だった?」
突然そんなことを訊かれて、ドキッとする。
「ひょっとして、他のヤツと行く約束してた?」
「……い、いえっ、していません」
「それならよかった」
にこりと笑う裕貴先輩に、あたしは思い切って訊いてみる。
「なんで、誘ってくれたんですか?」
他の女子たちからもお誘いがあったはずなのに。
「特に理由はない。とっさに栗沢のことが思い浮かんだから」
「……それって、“スイカ”が原因ですか?」
「だろうな」
……あぁ、やっぱり発端は“スイカ事件”なのか。
悲しいような嬉しいような、複雑な気分。


