「まぁ、終わったことだから気にするな。それより……、花火大会の日、18時に学校の正門に集合な」
「……分かりました」
練習に戻るため、いったんは教室を出ようとした加古川先輩が振り返る。
「あ、そうだ。お母さんによろしくね」
「……え」
「おまえのお母さん、面白いなー」
いったい、これで何度目だろう。
“お母さん、面白い”って言われるの。
「あ……、もしかしてあの時に、あたしが裕貴先輩を好きだって知っちゃいました?」
「いやー? ずいぶん前から気づいてたけど」
「はあ!?」
呑気に言ってのけた加古川先輩に、あたしは素っ頓狂な声を上げる。


