虎太郎は無言のまま、最初にベッドのすぐそばにあるサイドテーブルの引き出しを開けて裏を覗き込む。
「あっ! やっぱりここだった!」
どうやら“鍵”を見つけたらしい。
「姉ちゃん、行くぞ!」
「うん」
去り際に、あたしは冷たくなったママの頬をそっと撫でた。
看護師さんがしてくれたのかな。
ママはキレイにお化粧していて、今にも目を開けそうなほどだ。
「……笑ってる、ママ」
亡くなった人の顔を見て“笑ってるみたい”という言葉を聞くたびに、それは単にアナタが自己暗示にかかっているだけでしょうが、と、あたしは突っ込んでいたけれど。
ママは、ほんとうに笑っていた。
口角が上がっていて、何か楽しい夢でも見ているかのように、笑っていた。


