ノートを片手に虎太郎は立ち上がり、「行こう!」と言って玄関に走り出す。 あたしはわけが分からないままに虎太郎の後に続いた。 「どこに行くの?」 「病院。母さんの所だよ」 「……ママ……の?」 靴を履いて外に出ようとした足がぴたりと止まった。 「病室にだって、“引き出し”があるわけだし」 「……………」 そうだね。病室に行けば、この謎が解決するかもしれない。 だけど――…… 病室のベッドでは、ママが眠っている。 すっかり体温のなくなった、冷たいママが。