「……姉ちゃん。鍵、あった?」
「……ううん」
家じゅうの引き出しの裏すべてを探したけれど、ママの言う“鍵”は見つからない。
虎太郎はノートに書かれたメッセージに、もう一度目を通す。
「……“塵となる前に見つけよ”。塵って……鍵のことか?」
「それじゃあ、普通の鍵じゃないってこと?」
鍵、と言われたら、誰だって玄関の鍵とか、そういう普通の鍵を思い浮かべる。
でも、“塵となる前に”……ってことは、“扉を開けるための手段”であり、“普通の鍵”とは限らなくなってしまう。
「でも、この家にないことは確かだよね? 引き出しの裏には何もなかったし」
「うん……。そもそも、引き出しの裏自体が違うってことか」
「ねぇ、虎太郎。あんたの秘密の場所って他にないわけ?」
虎太郎は頭をひねってしばらく考えるけれど。
「……他には思い当たらない」
どうも、秘密の場所は引き出しの裏しかないらしい。


