「じゃあ、おやすみ。何かあったらこれを押すんだぞ」
枕元に置かれたブザーを、ママの手が届きやすい位置に移動する。
パパと虎太郎に続いて部屋を出ようとしたあたしを、ママが「千春」と呼び止めた。
「うん? どうしたの?」
客間の出入り口に差し掛かっていたあたしは、ママのそばに戻る。
「……女子会……しようか……」
「女子会? ……いいね。しましょうか」
あたしはにこりと笑って、ベッドの脇に腰を下ろした。
ママがいちばん話したかったのは、あたしと裕貴先輩のことだ。
相変わらず順調に続いていること。
裕貴先輩がマジメにあたしの家庭教師をやってくれていること。
すべてを話すと、ママは自分のことのように喜んでくれた。


