「蛍ちゃんのひざ掛け、私が借りてそのままだったわねー」
「え……? あぁ……、そうだったわね……」
「替わりにコレ使おうか」
静子おばさんが持ってきたのはタオルケット。
まぁ、いいか。
ひざ掛けの替わりになるものだったら。
静子おばさんにタオルケットを渡されて、あたしはママの前に腰を下ろして丁寧に掛けてあげる。
ずっと入院していたせいか、ママの体からは病院の匂いがする。
「これ……、喋りにくい……」
「うん?」
鼻に通した酸素ボンベのチューブを指しながら苦笑いするママ。
「しょうがないよ。それ付けてないと、苦しいでしょう?」
「……まぁね。母は……すっかり……弱ってしまいましたな……娘」
「何をおっしゃる。冗談が言えるうちはまだまだ健在ですぞ、母上」
――いつまで、ママとこんな会話ができるんだろう。
ママがいなくなったら、あたしは誰と、こんなふざけた口調の会話をするの?


