「……おかえり、母さん」
最初に振り返ったのは虎太郎。
もう、その口調でママの変化を感じ取れる。
「ほら、姉ちゃん。なに照れてんだよ。母さん帰ってきたぞ」
あたしがなかなか振り返れない理由を分かっている虎太郎は、優しい嘘をさらりとつく。
ゆっくり振り返ると、そこには酸素ボンベを杖替わりにして、パパに支えられて立っているママの姿があった。
ママの顔は……目が醒めるような真っ黄色。色白な肌はもう、面影すらない。
「……あら母上。ごきげんよう」
悲しみをごまかすようにしてふざけてみると、
「まぁ……娘……。お元気そうで……何より」
ママのほんの少し呂律の回らない口調に、胸が痛んだ。


