虎太郎と静子おばさんと3人で、早めに夕飯の準備に取り掛かかろうとしていた時に、パパがママを連れて帰ってきた。
「おかえりー」
静子おばさんは何の迷いもなく玄関に小走りで向かったけれど、あたしと虎太郎は足がすくんで動けなかった。
ママに「おかえり」と、笑顔で言ってあげたいのに――……
静子おばさんの話から想像するママの姿は、あまりにも辛すぎて。
あたしも虎太郎も、涙を堪えるのに必死だった。
「……姉ちゃん。絶対に……っ、泣くなよ」
震える声で虎太郎が言えば、
「……あんたこそ。泣いたら……、蹴り倒すわよ?」
強気なことを言うあたしの声も、震えている。
そして――……
「……ただいま。千春、虎太郎――……」
ママの弱々しい声に、あたしたちはほぼ同時に、びくりと肩を震わせた。


