「……だけど、」
きっぱりと言い切った虎太郎が、困惑の表情を浮かべながら言葉を付け足す。
「姉ちゃんの意見を聞いたら……、宣告するのもどうかと思った。言ってしまったら、母さん、次の日にでも逝ってしまいそうな気がして……」
「――虎太郎。あたしは逆に、あんたの意見を聞いて宣告した方がいいのかなとも思い始めたよ」
結局、どちらにするか選ぶことさえもできない。
「……正直、お父さんも宣告するかしないか決めかねている。おまえたちの意見を聞いてから決めようと思ってた。……ほんとうに情けないな」
「パパ……」
情けなくなんかない。それは当たり前の感情だ。
あたしたちよりも長い時間をママと過ごしてきたのだから。
……日付が変わるまで、あたしたちは話し合ったけれど。
その日のうちに結論が出るはずがなかった。


