思いもしなかったママの冷たい言葉に、あたしも虎太郎も言葉をうしなう。
「毎日来られたら、まるでママ、死期が差し迫った病人みたいじゃない? まぁ……実際そうだけど」
自虐気味にママは笑ってみせる。
「虫垂炎とか……そんな感じで軽く入院している程度だと思って? じゃないとママ、めげそうよ?」
笑顔で言ったママに、あたしは心の底から後悔した。
毎日、ママに会いに行って、面会時間ギリギリまで一緒にいようと思っていたこと。
あたしたちが現実逃避しているように、ママだってそうだったんだ。
現実を、受け止めないといけない。
でも、今のママにとって、現実逃避こそが生きる糧になっているのかもしれない。
「……母さん。俺らも忙しいから、毎日来るつもりはないから。気が向いたときに、ふらーっと来るかもしれないから、あんまりだらけた格好してんなよ?」
「そうそう。大口開けていびきかいてお昼寝とかね?」
「それじゃあママ、くつろげないじゃないの!」
――その日、あたしたちは笑顔で病室を後にした。


