「……千春?」
「……バカじゃないの? 試したところで、誰が確認できるのよ。“あら、うちの子供、こんなところに変なアザがあるわ”で終わるでしょ」
「分かんないわよー? ママの生まれ変わりが、あんたか虎太郎の子供になるかもしれないじゃない」
「勘弁してよ。ママみたいな子供。すっごい手がかかりそう」
ペンのフタを外すと、あたしはママの腕をそっと支えながらペンを走らせる。
「なんの絵を描くの?」
楽しそうに訊いてきたママに、
「あたしと虎太郎の似顔絵」
そう言って、あたしは小さく、男の子と女の子の笑っている顔を描いた。
「ヘタだからって、絶対に消さないでよ?」
「うわー。あんたって本当に絵心がないのね」
ママはあたしの落書きを見て、小さく笑った。


