「……ねぇ、千春。お願いがあるんだけどさ」
言って、ママはサイドテーブルに置いているペンを取ると、あたしに手渡した。
「ここにさ、何でもいいから絵を描いて?」
「……は?」
パジャマの袖を捲り上げて、ママはすっかり細くなった二の腕を指さす。
「ここに? なんで?」
「小さい頃に読んだ本に書いてあったのよ。死んだ人のカラダに落書きをしたんだって。そうしたら、その死んだ人が生まれ変わったとき、落書きもそのままだったんだって」
「…………っ」
「ママさ、それ読んだときに、自分がいつかそうなったら絶対に試してみたいなって思って」
ママ――……
諦めないで、頑張るんじゃなかったの?
なんで、そんな悲しい話をするの?


