「ほんとに末期かよ。その様子じゃ、後期くらいに戻ってんじゃないの?」
呆れたように“演技”する虎太郎に、あたしも合わせて言う。
「ガンの方が逃げつつあるわね。もうこの勢いで中期にまでいってみる?」
「……あんたらねぇ。少しは病人をいたわりなさいよ?」
病は気からって言うけど。
この調子だったら、いい方向にいくんじゃないかな。
ホスピスの話が出ていたけど、余命宣告なんかしてしまったら、いくらママでも気が弱くなってしまいそう。
「あぁ、そうだ虎太郎。オレンジジュース買ってきて」
「え? 飲んでも大丈夫なのか?」
「やだね、この子は。酒以外なら何でもいいのよ」
言われて、虎太郎は渋々と病室を出て行った。
ママと2人きりになった病室。
何を話せばいいのか、あたしは話題を探そうと頭を巡らせていた。


