パパの表情が少しゆがんだ。
「あのときママ、異常なしって言ってたけど……」
「……………」
「パパ。まさか、」
「千春。絶対にお母さんを責めないでくれ。約束だからな」
一呼吸おいてからパパは口を開いた。
「どうも精密検査を受けるように言われていたらしい。毎年のように人間ドックやら健康診断やら受けているのに、何の兆候もなくいきなり末期の肝臓ガンはおかしいって思って先生に調べてもらったんだ」
「……なに……やってんのよ、あの人は」
「肝臓に腫瘍が見つかって良性なのか悪性なのか分からないから、早急に精密検査を受けるようにって言われていたのに……」
“精密検査は受けましたか?”
“あ……っ”
担当医に突っ込まれたママは、まるでイタズラを咎められた子供のように“やばい”という表情をして、たった一言、
“うっかりしていました”
そう言ったらしい。


