黙り込んでいると、裕貴先輩はスマホを操作して誰かに電話をかけた。



「あ、もしもし? これから会えるか? あぁ……うん、分かった」



電話の相手は平川さんだ。

裕貴先輩がこれから平川さんの家に行く、という約束を取り付けて電話は切られた。



「裕貴先輩……」



あたしはよっぽど不安そうな顔をしていたんだろう。

裕貴先輩はそんなあたしの頭を優しく撫でながら、「大丈夫だから」と言った。





裕貴先輩に送られて家についたあたしを出迎えたのはママだった。



「おかえり。どうだった?」



てっきり緩み切った顔で冷やかし気味に訊いてくるのかと思ったら、意外とママは冷静で拍子抜けしてしまった。



「……うん。付き合うことになった」



静かにそう報告すると、ママはあたしをギュッと抱きしめて言う。



「6年間、よく頑張りました」