「……去年の花火大会で、俺ら手ぇ繋いだろ? 覚えてるか?」
「あぁ……はい、覚えてます」
花火大会で裕貴先輩と手を繋いだこと。
あたしは昨日のことのように鮮明に覚えている。
「あのとき俺、すげー緊張してさ」
「えっ!?」
裕貴先輩の口から“緊張した”って言葉が出てくるなんて。
だってあのときの裕貴先輩は、とても緊張しているようには見えなかった。
むしろ、“女子と手を繋ぐ”ということに深い意味すら抱いていないようで。
「き、緊張したのは、あたしと初めて手を繋いだからじゃないですか?」
「……最初は俺もそう思ったんだけど」
でも、と、裕貴先輩は淡々と話を続ける。
「花見の日に梨緒と会ったとき、昔みたいに手を繋いだりしたけど……何て言うんだろうな、“ちがう”って思ったんだよ」


