「確か、近くに公園があったよな」
家を出てすぐ、裕貴先輩が訊いてくるけれど、あたしは無言で頷く。
顔を合わせたくなくて、あたしはずっと俯いたままだ。
公園までの道のり。
裕貴先輩の少し後を歩くあたしが考えていたことは実にくだらないことだった。
……裕貴先輩の記憶力ってすごいな。
たった一度、ママが買ったスイカを一緒に持って家に送ってくれただけなのに。
それだけなのに、学校からあたしの家までの道を知っているうえに、近くに公園があることまで覚えているなんて。
18時過ぎの公園はひと気がほとんどない。
犬を散歩させている人が時折、公園を通り抜けるくらい。
あたしたちは公園の隅にあるベンチに腰を下ろす。
「……鼻血、大丈夫か?」
ママの嘘を真に受けて裕貴先輩が心配そうに聞くもんだから、あたしもつい「大丈夫です」と嘘をつく。


