「なに? 話って? 千春の代わりに私が聞いてあげる!」
興味津々なママが余計なことを言い出す。
「いえ、本人に話さないと意味がないんです」
「えーそうなのー? つまんないー」
拗ねたように言いながら、ママがこっちに向かって歩いてくる。
「ほれ、さっさと出る!」
「ちょ、ちょっとっ」
ママはあたしの腕を掴むと、無理やり裕貴先輩に引き渡す。
「………っ」
裕貴先輩に顔を見られたくなくて、あたしは1秒たりとも顔を上げない。
いま、裕貴先輩がどんな顔をしているのか。それを知っているのはママだけだ。
「門限19時。制限時間は45分です。それまでに娘を送り届けること」
きっぱりと言ったママに、裕貴先輩は笑いを含んだ声で「了解」と答えた。


