「……栗沢?」
涙を零したあたしに、裕貴先輩は心配そうな顔をしている。
「実を言うと、あたし、小学生の時から裕貴先輩のこと好きだったんですよ」
「……うん」
驚く素振りすら見せず、裕貴先輩は小さくうなずく。
「……知ってたんですか?」
「いや、小学生の時からってのは初耳だけど、おまえの気持ちは何となく……」
「うわーマジですか。恥ずかしい」
涙は見せたけれど、笑う余裕があった自分を心の底から褒めてみる。
ドロドロとした、嫌な失恋のしかたじゃなくてよかった。
裕貴先輩だって、あたしがさらりと笑うことで救われたかもしれない。
「でも、裕貴先輩が平川さんを好きならしかたない。あたし、あきらめます、先輩のこと」
「…………」


