「梨緒からは“やり直したい”って言われた」
「裕貴先輩は? 平川さんのこと好きなんでしょう? だったら、」
「うん。梨緒のことは忘れられなかった。だけどヨリを戻し……、」
また続くであろう平川さんへの思いを、もうこれ以上は聞きたくなくて。
「――裕貴先輩」
続きを言おうとする裕貴先輩の言葉を無理やり遮った。
話をいきなり中断されて、裕貴先輩はほんの少し顔をしかめている。
「あたしの家に、恋愛の神様がいるんですよ」
「……えっ?」
「平川さんとのことで悩んでいるんだったら、恋愛の神様に相談してみるといいかも」
「……それって、おまえのお母さんだろ?」
ふふ、と笑ってみれば、堪えていた涙がはらはらと零れ落ちた。
あぁ、全然ダメじゃん、あたし。
泣くのはここじゃないって言い聞かせていたのに。


