涙を堪えるのに必死で、声が上ずる。
「……まだ、戻してない」
“まだ”――……?
じゃあ、いずれは……ってこと?
「裕貴先輩は平川さんのこと、どう思っているんですか?」
「……別れた時はすっげー腹が立った。顔も見たくなかったし、声も聞きたくなかった。けど、そうやって思えば思うほど、梨緒のことが頭の中から離れなくて」
……泣くな。
泣いたらダメ。
泣くのはここじゃない。ママとの“やけ酒”と、奈瑠美との“やけ食い”の時だ。
下唇を噛み切りそうなほど強く噛んで、こぼれそうになる涙を堪える。
「嫌いになったはずだったのに、結局は忘れられなかった」
「じゃあ、どうしてヨリを戻さないんですか? 平川さんにその気がないってこと?」
ほとんど自棄になって、裕貴先輩に食って掛かるようにして問い詰める。
裕貴先輩はそんなあたしを前にしても冷静に話を続けた。


