まず、平川さんとのこと。
けれど、すぐに切り出せなくて黙り込んでしまったあたしに、裕貴先輩が言う。
「……梨緒のこと？」
「……えっ？」
「……俺の元カノの平川梨緒」
あんなに吹っ切れて、頑張ろう、と決めたのに。
あたしたちのあいだでは“平川さん”だった元カノのことを、裕貴先輩がさらりと“梨緒”と口にした瞬間、泣きそうになってしまった。
たったそれだけで感じ取れる２人のカンケイ――……
「――そうです」
正直に言ってみれば、裕貴先輩はやっぱりお見通しだったらしく、やれやれといった感じの溜息をついてから口を開く。
「梨緒とのこと……何を訊きたい？」
少しの間をおいて、あたしは言う。
「……ヨリを、戻したんですか？」
