放課後、サッカー部の練習が終わるタイミングで、裕貴先輩を呼び出した中庭に向かった。
中庭の隅にあるセンダンの木。
初夏に咲く花たちが蕾をつけ始めている。
裕貴先輩たちサッカー部員は、夏のインターハイに向けて猛練習している。
インターハイが終わると3年生は受験勉強に専念するため、事実上、これが最後の大会になる。
「……ごめん、遅くなった」
芝生を踏む足音と、甘く低い声。
振り返れば、スポーツバッグを肩に下げた裕貴先輩があたしを見据えている。
「あっ……、いえ、呼び出したりしてすみません」
「いや、別にいいよ。……で? 話って……」
いきなりきた。
だけど、あまり時間は割けない。
受験生でもある裕貴先輩は忙しいのだから。
「ちょっと訊きたいことがあって」
「…………」


