「次はなんだよ、姉ちゃん。父さんの喪服、」



言葉を遮るように、あたしはエンディングノートを虎太郎の前に差し出す。



「あ、ひょっとしてこれ? 母さんの友達の連絡先……」


「ううん、連絡先が書かれている手帳じゃないけど。これ、エンディングノートだよ」


「……エンディングノート? 母さん、そんなの残していたのか?」



高2男子がエンディングノートの存在を知っていて安心した。

“何それ?”と聞かれたときに、いちいち説明するのが煩わしい。



震える手で表紙を開くと、そこには懐かしいママの字が並んでいた。



最初のページは年表で、おそらくそれはママ自身の生い立ちを書くようになっていたのだろう。


でもママはその年表を、あたしと虎太郎の成長記録のように使っていた。