「ねぇ、加古川先輩。急用ってなにっ!?」
奈瑠美は裕貴先輩のドタキャンに納得がいかない様子で、加古川先輩に食って掛かる。
「そんなの知るか。裕貴から“急用ができて行けなくなった”ってメールが来ただけだから」
そう言いながら加古川先輩はスマホを操作して、裕貴先輩からのメールを見せる。
メールの内容は加古川先輩が言ったとおりのもので、受信した時間は9時25分。
あたしとの電話を終えた直後だと思う。
この時間、あたしは早く裕貴先輩に会いたくて、心を躍らせながら身支度を整えていた。
「……じゃあ今日は3人でお花見しよう! お弁当、食べよう!」
裕貴先輩が来れなかったのは残念だけど、急用が入ったんだから仕方ない。
また今度……そう、裕貴先輩たちの都合のいい日に、また予定を立てればいいんだし。
ポジティブに考え直して、あたしは今日1日を楽しむことにした。
満開の桜の木を、スマホで何枚も撮った。
いちばんよく撮れた画像を、お花見に来れなかった裕貴先輩へのお土産にしようと思って。


