「あ! いたいたーっ!!」
桜丘公園の入り口にある噴水。
そこが裕貴先輩たちとの待ち合わせ場所だった。
……はずなのに。
「……裕貴先輩は?」
待っていたのは加古川先輩だけで、裕貴先輩の姿が見当たらない。
あたしが辺りをキョロキョロと見渡していると、加古川先輩が戸惑ったように言う。
「裕貴から聞いてない? 急用ができて行けなくなったって」
「………えっ? 聞いてないです。朝、電話したとき、何も言ってなかったけど……」
「あれ。じゃあ、その後に急用が入ったんだろうな」
あたしとの電話を終えたあとに……。
思わず溜息が出そうになったけれど、せっかくのお花見を嫌な雰囲気にしたくなくて、あたしはぐっとそれを呑みこんだ。


