「……っ! やばいやばい、あたしも準備しなきゃ!」
うっとりと余韻に浸っていたあたしはふと我に返る。
大急ぎで自分の部屋にまた戻り、慌ただしく準備した。
お花見をする桜丘公園は電車を乗り継いで1時間くらいの所にある。
駅で待ち合わせていた奈瑠美は、あたしが慎重に抱きかかえている重箱を見て驚いていた。
「気合い入ってるねぇ、千春」
「うん、頑張った! 奈瑠美の方は完璧?」
お弁当はあたしが作って、飲み物とお菓子は奈瑠美にお願いした。
「完璧ー。でもさ、裕貴先輩と加古川先輩の好みが分かんなくて、お菓子買うのに苦労したー」
袋の中を見ると、いちばん無難そうなスナック菓子がたくさん入っている。
「うん、完璧だよ」
「けど千春、お弁当作るの大変だったでしょ? お母さんにも手伝ってもらった?」
「……それがさぁ」


