いろいろ考えた結果、あたしはとてもいいことを思いついた。
「じゃあ先輩、まず、ベッドから脱出してください」
『脱出……?』
「脱出したら洗面所に行きましょう!」
『洗面所……?』
今にも二度寝してしまいそうな寝ぼけた声だけれど、電話の向こうからはガサガサと物音が聞こえる。
あたしの言った通りにベッドから抜け出ているようだ。
『洗面所、着いたけど?』
「では、顔を洗ってください」
あたしも洗面所にやって来て通話をスピーカーモードにすると、スマホを脱衣カゴの上に置いて顔を洗う。
『洗ったー』
スピーカーから裕貴先輩の声が聞こえる。
もう完全に目が醒めてしまったようで、掠れていた声はいつもの声に戻っている。


