あたしみたいな平凡女子は裕貴先輩の彼女になんてなれない。
あたしを振った裕貴先輩は、きっと気を遣う。
そして、だんだん疎遠になってしまって、“ただ見ているだけ”の頃に逆戻りするんだ。
気軽に話してくれるのは、おそらく加古川先輩だけだろう。
「もうほっといて! あたしはあたしなりに頑張っているんだから!」
ママ、言うだけは簡単だよね。
あたしの身にもなってよ。
若かりし頃のママは失敗をおそれずに押して押して押しまくっていたらしいけど、あたしは違う。
裕貴先輩のそばにずっといたい。
今はただ、そのことしか考えていないのだから――……
「じゃあ、ほっとく! 虎太郎、バイトの話は白紙に戻す!」
「はあ!? そんなんアリかよ! 姉ちゃ……」
虎太郎が必死に抗議していたけれど、あたしはそれを聞かずに自分の部屋へと立ち去った。


