慇懃無礼にも兄貴はズカズカと蒼季の部屋に入り込んだ。


そしてどかりとソファーに座り足を組んで、ベッドの上に座る蒼季を見て、いきなり言うには。


「お前、サーキットでアルファロメオ転がせるか?」


だった。


おいちょっと待てぇぇい!!!!

ここまで来てそういう話をするのは止めてくんない?蒼季がその気になっちゃうじゃん!!


「……アルファロメオの、何?」


ほらごらん!

蒼季の目がさっきの甘々なもんじゃなくて、バトル前の爛々としたものに変わっちゃったじゃないか!


「155。相手はフィアット・テムプラ。どうよ?」

「……たまんねぇな。本場で転がしたいとは期待してたけど」

「なら決まりな。明日の夜9時。調整したけりゃ下にある。今から試してみれば?」

「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!! またなんで私を除いて話を進めてんの!? なんで蒼季に走らせるの!?」


蒼季も蒼季だよ!

ここまで来て、車の話しとかバトルの話しとか!


それに目がもうギラついてるし、臨戦態勢に入ったし!


「華音。ちょっと行って慣らしてくる。お前も行く?」