思えば海に誰かと来たことなんかなかった俺が、こうして他のヤツと肩を並べて砂浜に寝そべっているってのもおかしな絵面ではあるだろうな。




父親は議員先生、母親はその妻。兄貴は先生によく似た出来た息子さんで、俺だけがあの家のはみ出し者。

家族の団欒が暖かいと感じたことなんか一度もねぇ。大体にして暖かい家庭がどんなもんかなんて、俺が求めることもできなかった。

求める以前に、そんなものがあの家には無かったんだから求めようがないだろ。

春臣は自分の両親が亡くなるまでは一応まともな両親に育てられていたようだが、その両親が亡くなってからヤツは道を踏み外した。


親の愛情を覚えていないと春臣は言うが、それは俺に気を使ってのことだろうよ。ヤツはオンナにはだらしがないが、人として男としてのけじめのつけ方には俺も感心している。だからアイツの周りには笑い声が絶えないでいる。


俺はそんな風には生きられない。


ナイフみたいにギラついて人を傷つけることしか知らない俺には真似できない事だと思ってた。