イディアム王子はミチルと居る間、終始笑顔だった。

ミチルはあの怖い顔の写真が信じられなくなっていた。

(こんなに笑う人なのに・・・。どうして対外的な写真があれなの?)


「僕と2人で話すときには、イディアムでもイディアムさんでもイディアム様でもいいよ。

さすがにイディアム君って言われるのは年齢差からいってもはずかしいし、うっかり誰かに聞かれたら君が処罰されかねないからね、おすすめできない。

そして、対外的にはイディアム様または、殿下とか王子とか・・・そのあたりでよろしく~。」


「りょ、了解です。
あの・・・私にあわせていただいてありがとうございます。

イディアム様はとても優しい人なんですね。
写真とはかなり印象が変わってしまいました。」


「僕は写真写りが悪いからねぇ。
みけんにしわが入ってたかい?いかにも怒ってますって感じの?」



「え、ええまぁ。」


「そっか。でも、もう怖くないかな?
打ちとけたと考えてもいい?」



「は、はい。でも王子様って大変なんですね。
何人おられるかも知りませんが、お妃候補全員とこうやってお話されているんですよね。

いろんな国のいろんな話し方の人にあわして話すなんてすごいです。」


「う~ん・・・まぁそうなんだけどね。
たいていの場合はこんな言葉のキャッチボールはできなかったんだよ。

おはずかしい話なんだけど、ほとんどは聞き役だけで終わった。

話が合っても、専門的なことだったりで知識が途切れたところで終了って感じなんだよ。

だけど、さすがキョウがスカウトしてきただけのことはあるね。
君と話すと気持ちが明るくなる。」


「ええーーー!そうですか?あはは・・・。
これでも柏木さんにアドバイスされてがんばっているんですよ。」


「へぇ、キョウは何と言ったの?」


「入国して初めての会話なのだから、リラックスしていつもどおりの自分を出すようにしなさいって。」



「いつもどおりできた?」


「まだ緊張しています。でも、イディアム様がざっくばらんにしてくださったから、言葉を選ぶことばかりに集中しなくなってとても話しやすくなりました。

それに・・・写真はウソだってわかっちゃったし。」


「ウソって・・・いちおう写ってるのは僕なのは間違いないんだけどね。

ミチル・・・これから君にとって初めて習うこともいっぱいだと思う。

でもね。」


「イディアム様は心配性なんですね。
それとも、私が子どもっぽくて心配になってしまうのでしょうか?

私は頼れといわれたら、バンバン頼ってしまいますよ。
泣きついてしまいますよ。いいんですか?」


「いつでもどうぞ。あはは・・・君はノリがいいね。
さすがキョウが高得点を入れただけのことはある。」


「高得点?テストなんてありましたっけ?」


「面接のテスト結果だよ。
キョウの話だと、君は人付き合いについて高得点な人物だときいたよ。

面接って・・・(うそっ、あの長いキスで高得点なの?なんで?)」


「お妃候補者それぞれに、キョウが課題を与えてその反応を見て決めたらしい。
内容までは教えてくれないんだけど、君のときはどういう課題だった?」



「えっ!!そ、それはですねーーー。
(うわっどうしよう・・・王子様の前に毒見されましてぇ・・・なんて言えないし・・・。なんていえばこの場を切り抜けられるのかしら・・・困ったわ。)
あの・・・それは、ちょっと・・・」


「そんなに説明しにくいことをさせられたのかい?」


(ああ、もう何を言っても信用してもらえない状況だわ。
・・・・・私だってある意味被害者なんだから、こうなったら正直にいってお暇しちゃおうかしら・・・。)



「彼女は説明しづらいでしょうね。うっかり説明すればイディアム様に誤解されて処罰されてしまうかもしれないですから。」


「へっ?・・・・!!!」