テラスティン王国は日本と同じように海に囲まれた島だった。

気候は日本の春とさほど変わらない。


広さは沖縄よりやや大きめってところで小さな国なのだ。

しかし、この国の人は勤勉で、日本では物があふれているのに対してここではリサイクル推進よりもリサイクルがいらないように過ごすことが美徳とされていた。

例えば、買い物にレジ袋も水よけビニール袋も用意されていないショッピングセンター。

密閉容器を持参している人ならそこに水の滴り落ちるものを入れてもらって持ち帰るが、ほとんどの人は品物を選んで支払いは済ませて、あとで家まで届けてもらっている。

家ではボールなどの容器を持って玄関で受け取るのだ。


それだけでも興味深いと思って町の見学がしたいと希望したミチルだったが、王子との挨拶時間があるとのことで、空港からすぐに王宮向かいの妃候補たちの宿泊所となっている建物へとたどり着いた。



「ここは王室の女性の方々専用のオジュロール殿という場所です。
これから、ミチル様はこちらで入浴ならびに美容などの準備に入っていただきます。

これから先はオジュロールの女性スタッフがお世話させていただきますので、指示に従ってお進みください。
準備が整いましたら、こちらの担当者から私宛に連絡が入るようになっていますのでお迎えにあがります。」


「あ、そうなんだ。じゃ、またね。」


「は、はぁ。」


「柏木?疲れちゃったの・・・ノリが悪いよ。
私をしごくつもりなんでしょう。
しっかり作戦たててきなさい!いいこと!」


「はっ、かしこまりました。
ミチル様、いってらっしゃいませ。」



「うむ。」


ミチルは女性スタッフに連れられてスタスタと行ってしまった。


(ずっとさびしそうに黙っておられたと思ったら・・・フフ。
いちおう、私などにも気を遣うすべは心得ておられるのだな。

口は乱暴だが、性根はいい娘でよかった。)



ミチルはまずお風呂に案内され、お風呂でのお付きが5人ほどいるのに驚いた。

「わ、私はひとりで洗えますが?」


「いけません、これから王室の方々とお会いになるのですから、磨きをかけないと!

そういえば日本には『みそぎ』などというきれいにする儀式があるのでしょう?
それと同じだと思ってくださいな。」


「私は穢れてるっていいたいのかぁーーー!?」


入浴後、エステや美顔などを済ませると、これから半年の間生活するための部屋へと通された。


「桃の間?桜じゃないのね。」


「はい、桜はべつの方が入っておられましたので。
お気に召しませんか?」


「ううん、どこでもいいのよ。
雨露しのげて寝泊まりできれば・・・。」


「まぁ、ここは建物は古いですがメンテナンスはかかせませんので安心して住めますよ。

あ、申し遅れました。
私、カエ・リヨンナと申します。
ミチル様のここでのお世話を担当させていただきます。
よろしくお願いします。」


「あ、こちらこそよろしくお願いします。
って、私これから何をどうしたらいいか、ぜんぜん知らないんですけど。」



「これから今夜の王子との対面式のためのドレスアップとメイクをいたします。
それからお迎えが来ましたら、王宮へと向かっていただきます。

お話が無事終わって、こちらへお戻りになられたら、本日のスケジュールは終了。
明日の朝6時に起こしにまいりますので、ジョギングなどをお楽しみくださいませ。」


「6時ね・・・わかったわ。」

(ああ・・・ジョギングなんて趣味ないわよ。
いつも7時20分ぎりぎりまで寝てる私がそんなことできるかしら。
きっと寝ぼけた顔してしまう・・・。うう・・・。)