アヤカシとキツネさん

ただ――、



目の前に倒れていたから。


足を退けて下さいと世羅さんが言ったから。




こんな私を頼ってくれたから。




だから――、




「その…助ける、というか…水をかけただけなので…」




それで助かればいいな、と思った。




「――そう」



「はい…すみません…」



「謝らなくていいのよ?」



向かい合った雅さんの顔をそっと見上げると、申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。



「謝るのは私の方。ちょっとした好奇心だったのだけれど――…困らせてしまったみたいね」



「えっ?…い、いえ、そんな…っ」



あわあわしながら視線を逸らして、慣れたように着付けていく雅さんの美しい指先を見つめた。