アヤカシとキツネさん

「――ハッ!あっ、あの、う、憂です…は、はじめまして…っ」



心の準備が出来ていなかったため、つっかえながら何とか声を発する。


雅様と呼ばれた女性は、優しく目を細めて頷き、私の挨拶に応じてくださった…きっと雅様も偉い立場の方なのだろう。



「憂、こちらへ。ついていらっしゃい」



「……えっ!? わ、私ですか!?」



「憂は憂しかいないでしょ。あ、雅様はね、豊様の奥様だよ。はいっ、行ってらっしゃーい!」



ドーンッ!と、小さな手でそれはもう力強く背中を押された。

その勢いでつんのめりながら何歩か前に踏み出す。