アヤカシとキツネさん

千歳くんの目が――、



笑っていなかったから。



鈍く光るその銀色が否定を許さなかったから。




息が、出来なかった。




「もー、駄目だよ、弦。ぼくの大事な憂なんだから狐派に決まってるじゃん!」



「ふはっ!そりゃあ、悪かったねぇ」



クスクスと可笑しそうに笑う弦さん。


その綺麗な笑顔に背中は震えなかった。




「――憂?」



「…えっ、あ…千歳…くん」



まあるい大きな目が不思議そうに私を見上げている。


キラキラと優しく輝いて見えた。



「どうかした?」



「……ううん、何でもないよ」