アヤカシとキツネさん

「ぼくの名前、千歳ってね、縁起の良い言葉なんだって」



天を仰ぐように、顔を上に向けた千歳くん。



「千年も、その先も、ずっとずっと幸せにって、――母様がつけてくれたの」



そう言って寂しそうに笑って、そっと目を閉じた。


風がさらりと髪を揺らす。



「……あいたいなぁ」



小さな小さな細い声が――


そっと浮かんで、


消えた。



「千歳くん…」