性別は――男。

服装は――袴。

オプションに――綺麗な金色のフワフワした耳とフサフサした尻尾。


まず最初に思ったのは「え?コスプレ?」ってことだった。


声を掛けるのを躊躇う理由に十分なる、と私は思う。


ああ、だか、うう、だか、呻き声らしきものが聞こえたので、一応生きているのだろう。


助けを必要としていることは、わかった。

とてもよく理解していた。


だけど――、



「……うわっ、動いた…」



その耳と尻尾があまりにもリアルに動くものだから――付け耳、付け尻尾という可能性が砕かれた。

耳や尻尾に僅かに付いた雨粒が、振動でさらさらぱらぱらと振り払われていく。