「あれ?…斐川君じゃ?
……柏木君も?」
聞きなれた声が
俺達の名前を紡ぐ。
コート沿いの遊歩道を
ギターケースを抱えた集団が、
たたずんでいて。
その中から、こちらに来る、
その人影はーーー
まさか……
「レンちゃん?!」
「やっぱり、当たった。」
ニッコリ笑うその人は
まさしく会いたかった女の子で。
勤務時間外のせいか
いつもより穏やかなのが
印象的で。
「あれ?2人?神島君は
一緒じゃないんだ?」
ここに居ない『神島』という
名前に嫉妬する。
「今日は…2人です。」
そんな感情は飲み込むけど。
「レン!!先に行くぞ!!」
コートの外にたたずむ集団から
彼女を呼ぶ声がする。
「えっ!?待ってよ!!
じゃあ、私行くね。また明日。
斐川くん、今日はアリガトね。」



