そうなのだ。

あの日、“音村係長の元カレ”を
名乗った人事部長は、音村係長の
お兄さんだった。

…見破ったのは、業務上のミスが
原因したらしいが…柏木だ。

週半ば、総務部へ出向いた俺は
階段の踊り場で、人事部長と
対峙する現場に出くわして
しまった。

『で、結局、キミが収まったの?
レンの恋人に。』

階下で反響する人事部長の声に
この間の接待を思い出し、
眉間に皺を寄せる。

『…随分、情報早いですね。』

応える声は…柏木…
聞き覚えのある、独特な
イントネーションが
そう返していた。

…いや、それより、恋人って…

思わず、足を止め、気配を消すことに
努めてしまう。

『見合い相手、キミでしょ?』

その言葉に、思わず息を呑んだ。
最近耳にした、会議室からの
絶叫が蘇る。

『…やっぱ、気になるんだよね。
別れたっていってもさ、キミ、
レンから見たって随分若いしさ。』

“幸せに出来んの?”そう言って
クスクス笑う声に立腹してしまう。
…俺が言われたわけでもないのに。

でも…直後、返された台詞に
俺は、唖然としてしまう。

『別れた…ですか。』

面白そうな声色に
嫌な予感がした。

間違いなく
リベンジが始まる。