「音村、待たせたか?気負うなよ。
ちょっと会って、お茶をするだけだ。」
待ち合わせ場所で落ち合った部長が
さっさと行くぞとせっつく。
「部長…。ずっと言ってますけど
私、気乗りしないんすけどぉ…」
部長といると、遂、就職したての
ガキんちょにもどってしまう。
「何、クチビルを尖らせとるんだ。
そろそろ小皺になるぞ。」
そういって部長は、ケラケラ笑う。
部長の為に言っておくが、
多種ハラスメントが大流行な昨今、
彼は、場所や誰彼選ばず誤解を招く
発言はいたさない。
「部長、そこ少し段差があるから
注意してくださいよ。腰に来ますよ。」
「…音村、今、仕返ししたろぉ。」
「まっさかぁー」
棒読みで否定する。
…ああ…行きたくない…
ココまで来て、諦めが悪いのは
重々承知の上だが。
重厚な回転扉を抜けエントランスへ
足を進める。
“音村。実はな、知人から音村を
紹介して欲しいと頼まれてな。
俺の顔を立てると思って、近々
会うだけ会ってくれないか。”
…ああ…嫌なんですけど…



