本来なら、完全アウトな事例。
リヒトにも、早々に連絡を
するべき案件や。

「この件については、すまん。」

この春、学歴の壁を超え
見事主任に昇格した
チビッコに、素直に詫びれば…

「ホントだよ。
次やったら、許さないよ。」

…って、女子かっ!!

相変わらずの女子力の
高さを発揮する彼は、
斐川の情報に因る所、
“大学卒業”条件も来春には
満たすらしい。

この根性と努力には
本当に恐れ入った。

…大分、斐川が家庭教師
したみたいやけどな(笑)

ずっと、同僚の通訳で
彼奴らといたから、
中々、俺個人の時間なんて
取れんかったけど。

いいタイミングやな。

俺もハッキリさせたい
事がある。

「…それはそうと、俺も
聞きたい事があってさ。
時間、取れるよなぁ?ん?」

そう言って
階段室の屋上を指差せば

「ええ…っ。仕事中じゃん?
アイツら心配じゃん?
カノジョにちょっかいとか
出されたら困るしぃ…?
また後で…。」

聞かれる事に心当たりが
あるのだろう、無駄な言い訳を
羅列する。

まあ、彼の取扱方法は
十分承知している。

「Right now 」

強引に歩みを進めれば
諦めた様に、溜息を一つ
こぼして、後に続いて来た。