ガラス越しに、いつか
柏木くんが連れ出してくれた
屋上が見える。


「…いや、あれは、
夢だったという方向で…」


つい、気まずい事を思い出して
思わず声を出してしまった。


「何、ぶつぶつ言ってんだよ。
音村、マッチ頂戴。」


「ああ、テルテルも来たの?
サンキューでした。」


ポケットに入れていたソレを
取り出し、隣りにもたれ立つ
オトコに手渡す。


「お前が、タバコ吸うなんて
久しぶりだから来たんだ。」

チラッと視線を此方に
寄越しながら、そうのたまふ。


「…なんだよ。そりゃ。」


「俺が一緒だったら、
お前は、意地でも
泣かないから。」


返す言葉を探して
視線を彷徨わせる。

そんな私の事など
お見通しなのだろう。
此奴は、知らぬ振りして
言葉を続けるのだ。


「そうだ。アイツらの
壮行会の日程と場所
決まったって。

篠田からメール入るから
確認しておいて。

啓太にも送ってやってって
指示してるから。」


「そっか。ありがとう。
啓太も寂しくなるだろうね。」


斐川くんと仲良くしていた
様子だから。

そんな事を思っていれば。