「…レンちゃんは、
ドキドキとか、しやんの?」


互いに顎と眼球を
ロックオンしたまま
大人気なく、ムクれたまま
そう、問えば。


「してたまるか。」


そう、即答して。


「ぐおぉっ(泣)」

「技あり。1本」


額に甲虫が激突したかの如き
衝撃に、カノジョを捕らえていた
掌を咄嗟に外し、痛む額を覆う。

「…痛ったあ…」

「大袈裟なんだよ。キミは。
ババァ口説いてる時間あんなら、
さっさとリハビリ行ってこい。

前向けよ。前を。

テメェの後ろになんて
ロクなモノはいねぇよ。
精々、背後霊くらいだろ。」


ババァって…。

…ちうか

なんつう、ザツな慰め方
するんや…この人は…。

呆気に取られて
その人を見やれば。

「ほら、コレ飲んだら行きな。」


ニカっと笑いながら
オレの腕時計の文字盤を指す。