「じゃあ、後はヨロシクね。」


佐藤係長からのメールを確認し
訪問先の住所をナビに入力する
俺に、啓太が微笑みかける。


「…?ああ。」


何となく、腑に落ちず
曖昧な受け応えをして
ゆっくりアクセルを踏む。

それにしても…コレは、
どこなんだろう?

バックミラーには、
手を振って見送る啓太が
写り込んでいて
…どこまで、乙女なオトコ
なのだと、苦笑してしまった。


「…ここか。」


ナビに誘導され、到着したのは
一棟のマンションで。
ここで間違いなくば、さしずめ、
アポ相手は、個人事業者いった
ところであろう。


「…あ。しまった。」


俺としたことが、社名も担当者名も
確認していないじゃないか。

…全く、我がことなれど、
気が緩み過ぎだ。

小さく溜息をつき、スマホを
ポケットから取り出し、
画面をタップした。