「みんな、バイバイ!」


愛希は大きな声で、元気な声でそう言った。

父さんと母さんは少しだけ笑顔になり、手を振った。



どんどんと愛希が空気と混ざっていく。
これが成仏というものなんだろうか。



これで愛希とは二度目の別れになる。
もちろん父さんと母さんも。

一回目の別れは
お別れのあいさつもできないまま
愛希はこの世を去ってしまった。


だから今回の別れは
俺達にとって
辛いけど、いい別れになったに違いない。



「・・・愛希、俺もすぐそっち逝くから待ってろよ」


「いっちゃん」


「ん?」


「・・・ううんなんでもない!」


「お、おいなんだよ気になるだろ・・・!?」


「いっちゃんなら、だいじょうぶ」



俺に意味深な言葉を残して
愛希は綺麗に消えていった。


さっきまでいた愛希はどこにもいない。


だけどすぐにどこからか出てくるんじゃないかとも思ってしまう。



「・・・っ」


声をあげず
ひっそりと桃子が泣いていた。


七海も涙を流し、
父さんと母さんも涙を流していた。


知らず知らずのうちに
俺の目からも涙があふれ出てきた。




「あいつ最後泣かなかったのに、俺らが泣いてどうすんだよ」


「・・・本当にね!あははっ愛希ちゃんより子供だ。私たち」


「とっくの昔に分かってましたわよ。愛希さんは私たちよりも大人だったわ」


「桃子が泣くとは思わなかったよ俺」


「・・・泣いて悪いの?」




少しだけ、
風の音が
愛希の笑い声に聞こえた気がした。


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