*ミーくんの好きなひと*



「……知り合い?」

 

不安げに私を見下ろすサラリーマンに、首を振って答えた。



「知らない」

 


どうせ。
 
ミーくんは私がナンパされてても気にしない。
 
妬いたことだって、一度もないんだから。
 



見ず知らずの男の手を、ぎゅっと握り締める。
 

もう、どうだっていい。
 

不思議そうに私たちを見た後、サラリーマンは歩き出した。





「おい」
 

後ろから透明な声が響く。


「萌」 
 

肩を掴まれて、無理やり振り向かされた。
 
まっすぐ見てくるミーくんの顔を、直視できない。



「放して」
 


目を伏せたまま、その手を振り解こうと力を込めた。