「いいな……」



小さくこぼすと、ミーくんが振り返った。



「なんか言った?」

「ううん、なんでもない」
 


微笑みながら、心臓が絞られる気配に耐える。




「帰ろうか」
 


冷えたガラスに手を添えて、遠くの光を見ていたミーくんが言った。



「送ってくよ」 

「……うん」
 






――ミーくんの目も、暗闇に閉ざされちゃえばいいのに。 
 



何も見なくていいよ。
 

そばにいる私のぬくもりだけ、感じていればいい。
 




私以外の何もかも、ミーくんの視界から消えてしまえばいいのに。